拍手お礼A−1

(高木+千葉)

 

 

「高木さん!」
「んぁ?」
 必死に報告書の内容を考えていると、後輩に名を呼ばれた。
 おかげで妙な返事になってしまう。
「“んぁ?”じゃないですよっ!これっ!」
 バシッと千葉が高木のデスクに一枚の紙を叩きつけた。
「おい千葉!人が必死で書いた書類の上でそんなことするなっ!シワがよるだろ
「シワなんて気にしてる場合じゃありませんよ!」
 普段なら高木の一喝で引き下がる千葉だが、今日は違った。
「何てことしてくれたんすか!?」
「はぁ?」
 言われてよくよく千葉の手の下敷きになっている紙を見る。そこには、見慣れた自分の走り書きの文字。

「ん?……あぁ、昨日目暮警部にかかってきた電話に使った、言伝のメモか。それがどうしただ?」
 言伝をすることで怒鳴られる謂われなどあるだろうか?

しかし、千葉の声のボリュームは大きくなる一方だ。
「どうしたじゃないっすよ!俺の机からこの紙取ったでしょう!?」
「あ、そうそう。俺、その時ちょうどメモするもの持ってなくてさ。お前の机に散らばってたチラシから、裏が白くて要らなそうなヤツをもらっただ」
「要らなそうなヤツ!?」
 千葉は、さも信じられないという顔で高木を見下ろした。
「表をちゃんと見たんすか!?」
 鼻息荒く、千葉が手にしていた紙をひっくり返す。
 表面を見て、高木は一瞬固まった。

「……えーっと、もしかして保存用だった……とか?」
「もしかしなくてもそうですよっ!コレクションに入る予定だったです!!」
 そこにあるは、仮面ヤイバーを宣伝に起用した製品の広告。
 当然、その製品に寄り添うようにして、千葉の大好きな仮面ヤイバーがきめポーズで立っていた。


*     *     *     *     *     *     *

要・不要の価値観は、時として人により異なるものです。(笑)

 

 

 

 

 

拍手お礼A−2

(高木+佐藤+千葉)

 

 

 それは、高木と佐藤がまだ付き合う前のこと。

 

「佐藤さんって、結婚とかについて考えたことあるのかなぁ……」

コンビニで購入したおむすびをかじりながら、高木はボソッと呟いた。
 同じく隣でコンビニの弁当をかき込んでいた千葉が、苦笑する。
「高木さん、付き合う前からそんな心配してするんすか
「いいだろ別に。そもそも他人(ひと)の独り言を勝手に聞くなっ
「仕方ないじゃないですか〜、聞こえちゃったんすから。そんなに気になるなら、俺が本人に訊いてみましょうか?」
「は?」
 訊き返した時には既に、千葉は椅子から立って佐藤のデスクに向かっていた。
「わっ、バカ!千葉!」
 慌てて高木も後を追う。なんでこんな時だけ千葉は行動が早いのか。
「佐藤さー
「ん?何?千葉くん」
 こちらも昼食中だった佐藤が、カップ麺を食べる手止め顔上げた。
「ちょっとお訊きしたいですけど、佐藤さんって結婚について考えたこととかあります?」
「バカ、千葉! すみません、佐藤さん。こいつが言ったこと、全然まったくこれっぽっちも気にしなくていいですからっ!」
 引きつった笑顔を浮かべながら、ズルズルと千葉を引っ張っていく高木。
 それを不思議そうに眺めていた佐藤が、ボソッと呟いた。

「……あるけど?」
「えっ!?」
 高木がピタリと足を止める。引きずられていた千葉は、拘束の力が緩み咳き込んだ。
 対する佐藤は少し不愉快そうに眉根を寄せる。
「何よ、そんなに驚くこと?刑事として当然だと思うけど?」

「あっ、いえ。そうですよね〜、刑事だったら当然……え?」
佐藤の言葉を理解しかねていると、千葉が先を促す。

「それで、佐藤さんはどう思っていらっしゃるです?」

「ん?そりゃあ重要だと思うわよ。事件において、まず外せない証拠だし、犯人を特定する助けにもなるしね。まぁ、自分のことで言えば、一度服に付いたらなかなか落ちなくて困るけど……」

「……」
佐藤の話を聞く後輩二人は、嫌な予感に囚われ黙り込む。
だが、恐る恐る高木が口を開いた。

「佐藤さん、もしかして……“血痕”のことを言ってます?」

「は?だから今は血痕の話をしてるんじゃないの?」


*     *     *     *     *     *     *
★ベタなネタ……かな?

 勤務中の彼女の脳は、事件直結だと思います。(笑)

 

 

 

aicon-hana06年の9月25日まで頑張ってくれていた話です。

 

 

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