拍手お礼B−1

(ヨザック+アニシナ

+???)



「ヨザック!」
 毒女アニシナは、廊下で目的の人物の部下を見つけて呼び止めた。
「はいはい。なんです?アニシナちゃん」
「グウェンダルを見かけませんでしたか?彼はわたくしの大事な実験に付き合わなければならないのです」

“付き合わなければならない”……。既にグウェンダルに拒否権は無いらしい。
 対するお庭番は、軽く肩を竦めた。
「さあ。オレも閣下に報告事項があるんですけど、見つからなくて」
「そうですか。では見つけ次第、真っ先にわたくしの実験室まで引きずってくること。いいですか?いいですね」
 “連れてくる”ではなく“引きずってくる”。しかも、「いいですか?」と訊いておいて「いいですね」と自分で勝手に結論を出している。
 さすがは唯我独尊を地(じ)で行く女。
「了解しました〜」
 笑顔で答えるお庭番に背を向け、アニシナはさっさと歩き出す。
 彼女の姿が曲がり角の向こうに消えて見えなくなると、お庭番がボソッと呟いた。

「……もういいですよ、閣下」
 すると物陰から出てくる長身の男が一人。
「忘れないで下さいよ?小さい頃のアニシナちゃんの知られざる秘密」

「……わかっている」
 

 いつの時代も、取引は有効な手段らしい。



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★アニシナ嬢の秘密…何でしょうね?
 「わたし、も少し、背が欲しい」と呟いたこと?(笑)(←「天(マ)」より)

 

 

 

 

 

拍手お礼B−2

(ヨザック+ツェリ)

 


 いい加減にここから解放してくれないだろうか。
 ヨザックは人知れず溜め息をついた。



 目の前に広がるのは、部屋一杯を埋め尽くす色とりどりの布、布、布。布の山。その山に囲まれて
「あぁ〜」とか「まぁ!」とか嬉しげな声を上げているのは、眞魔国三大魔女の一人、ツェリだ。
 彼女の新しい服に使う生地を選ぶからと、不在のコンラートの代わりになぜか幼馴染のヨザックに
御鉢が回ってきた。
 初めのうちは、ツェリに「これ、どうかしら?」と訊かれる度に、それなりにちゃんとした意見を返して
いたのだが、早く解放されたい今となっては、「いいんじゃないですかー」の一本調子になりつつある。

 あまりにも退屈で、ヨザックは自身も周囲の布を何とはなしに一つ一つ眺めていた。
 すると突然、彼の眉がピクリと動いた。
―――これ、いいかも。
 彼の目に、とある一つの布が留まる。お庭番の中の女装の血が騒いだ。
 着たい。ぜひともこの生地でドレスを作って着てみたい。
「何をしているの?ヨザック」
 声をかけられ、慌てて手を離す。気が付けばその布に触れていたのだ。

「すみません、ツェリ様。その……――」
 弁解しようとしたお庭番は固まった。ツェリが瞳を爛々と光らせてこちらに寄ってきたからだ。
「これ、あなたが選んで下さったの!?素敵!あたくし気に入ったわ!!」

「……へ?」


 こうして、ツェリの中には、ヨザックはセンスのいい人物としてインプットされたのだった。
 無論、この後、ヨザックが彼女の服や布選びに駆り出される回数が増えたのは言うまでもない。



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「地(マ)」で、ツェリ様がヨザックに 服に関して同意を求めていたので、こんな話を。

 

 

 

 

 

拍手お礼B−3

(ヨザック+村田)

 

 

嘘ではない。……多分。



「げいかぁー……」
「んー?何?」

「も……グリ江 限界」
「またまたー。天下のグリ江ちゃんでしょ?これぐらいどうってことないってー」
 ニッコリと笑顔で返す大賢者様の視線の先にいるのは、ヨザック。
 厚さ五センチ以上はある分厚い革表紙の本を、十冊近く。それを図書室から村田の部屋へ運んでいる。
ちなみに、これで三往復目。
「あと一往復で終わりだからねー。頑張って〜」
「はぁー?そんなに本を持ち込んでどうするんですか。そもそも猊下は、何でいつも任務をオレに言うんです?」
 不満顔のお庭番に、村田は最上級の笑顔を向ける。
「何言ってるのさ。君を頼りにしているからに決まってるだろう?頼みごとなんてグリ江ちゃん以外に
考えられないよ」
 言えば相手は機嫌をよくしたらしく、
「あら〜。まぁ、そんなに言ってくれるなら、グリ江頑張っちゃうけどー」
と、足取りも少し軽やかになる。
 そんな彼を見ながら、村田は心中でひっそりと思った。

『頼みごとなんてグリ江ちゃん以外に考えられないよ』

 嘘ではない。ただ、意味が微妙に違う。
 有利にべったりのウェラー卿に頼もうものなら、笑顔で不機嫌オーラを放たれるだろう。
 フォンビーレフェルト卿もしかりだ。からかうにはもってこいの人材だが。
 フォンヴォルテール卿は、彼がいないと国政が滞るし、フォンクライスト卿も、彼がいないと有利の勉強
が進まない。
 他の兵はよく知らないし、残った頼める人物がいつもヨザックしかいない、というわけ。


 要するに、消去法。



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グリ江ちゃんは何て単純。(笑)そして、何て哀れ。(苦笑)

……ヨザック&ムラケンのコンビが好きな方、ごめんなさい。

 

 

 

★07年1月19日まで頑張ってくれていた話です。

 

 

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