拍手お礼D−1

 (有利+ヴォルフラム)

 


 右へ、左へ。
「待てっ!ユーリ!」
「待てるかっ!」
 しゃがみ、飛び跳ねる。
「なぜ逃げる!?」
「逃げるに決まってるだろ!?」

 あちこちから飛んでくる火の玉を、有利は必死によけ続けていた。
 その炎の発生源は、軽く卵を握るようにした、フォンビーレフェルト卿の掌。
「喜ぶべきだろう!?ぼくがお前の『はーと』とやらに、直々に火をつけてやると言っているんだぞ!?」
「だから、それはただの比喩だってば!本当に相手の胸に火をつけようとする奴なんていないって!!っていうよりそもそも、お前がおれのハートに火なんてつけなくていいからっ!!」

 “ハートに火をつける”。
 意味が理解できる日本人でさえ、そうそう恥ずかしくて日頃使わないであろう言葉。それをヴォルフラムに教えた張本人など、この国に一人しかいないだろう。
 有利は、心中でこれでもかと叫んだ。


――ウェラー卿めっ!!


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「(マ)王奥」で「ウェラー卿め!」を連呼する有利がツボだったので、書いてみました。(笑)
 まぁ実際は、次男閣下は有利が危険な目に遭いそうなことは言わないかもしれませんが。(苦笑)

 

 

 

 

 

拍手お礼D

 (グウェンダル+ヨザック)

 


「……というわけで、閣下の睨んだ通りこの噂は、他国への威嚇目的のただのハッタリだったようです」
「やはりそうか。了解した、ご苦労だったな」
「あ、それとですねー」
 口調を変えてゴソゴソと懐を探り出す部下を、グウェンダルは怪訝そうに見返す。
 まだ報告をもらうような事項があっただろうか?
「はい、これ。お土産でーす」
「なっ!?それはっ!」
 世間で冷徹な美丈夫と称される男は、ガタ、と思わず椅子を蹴って立ち上がってしまった。
 部下の無骨な手のひらに、可愛い子猫の人形がチョコン、とのっていたのだ。
「ご当地ケティちゃん、アラバナ版!着ているこれ、アラバナの民族衣装なんだそうですよー」
「……」
 お庭番の説明もそこそこに、グウェンダルは吸い寄せられたかのようにその人形に触れた。まるで、壊れ物を扱うように、そっと。
 気に入っていただけました?とはお庭番は口にしなかった。訊かずともこの反応を見れば明らかだ。
「いつもすまないな」
「いえいえ、前にも言ったじゃないですかぁ。オレは閣下の忠実な下僕なんですよん」
 笑いながら一礼し、ヨザックは踵を返す。
 静かに閉まった扉に、グウェンダルは僅かに口角を上げた。
 ……が。

「おやヨザック、丁度いいところに。グウェンダルは中にいましたか?」
 扉一枚挟んで響いてきた声に、彼は思わず手にしていたケティちゃんを取り落としそうになった。
 聞き慣れたくないが聞き慣れてしまった、悪魔の幼馴染の声。捕まればまた、「もにたあ」をさせられるであろうことは目に見えている。
 慌てて隠れようとしたグウェンダルは、ふと、先ほどの部下の言葉を思い出した。彼が自分の忠実な下僕ならば、きっとこの場を何とかしてくれるだろう。ヨザックが一言、「閣下はいませんでしたよ」と言ってくれればそれで済むのだ。
 頼むぞ、グリエ。心中で必死に懇願したグウェンダルの耳に、お庭番の明朗快活な答えが届いた。
「アニシナ様〜、お久しぶりで〜す!はい、閣下なら今、部屋でケティちゃんと戯れてますよー」


――グリエめっ!!


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あれ?この、ラストに叫ぶのは定着?(苦笑)
 ほら、お庭番はアニシナ様の点数を稼ぎたいですから。だから許してあげて下さい、閣下。(笑)それに、例えお庭番が「いなかった」と告げても、アニシナさんならきっと不思議装置で貴方の居場所を見つけますから!
(大笑)

 

 

 

 

 

 拍手お礼D−3

 (コンラッド+ヨザック)



 折角の久しぶりの休日だというのに、朝っぱらから腐れ縁の男にたたき起こされた。いや、太陽さえ顔を出していないのだ、日付は変わっているとはいえ、今を朝とは言わないのかもしれない。
「いつまでそのボケーッとした顔を俺に曝しているつもりだ?さっさと起きろ、ヨザ」
「ひとの休日安眠を妨害しておいて、何でそんなに偉そうなんすか……」
 渋々上半身を起こせば、ベッド脇に立っている男がこれでもかと爽やか風の笑顔で見下ろしてくる。実際は、胡散臭いことこの上ないが。
「喜べ。お前に俺の大事な仕事を譲ってやろう」
「だから何でそんなに上からの物言いなんすか。……で?大事な仕事って?」
「陛下を起こして、朝トレの付き添いだ。嬉しいだろう?」
「はぁ?」
 思わず首を傾げる。確かにそれは、この目の前の男が毎朝喜んでやっているらしい仕事の一つだと聞いたことはあるが。
「急な仕事でも入ったか?だがそれにしたって、何でオレなんだよ?ぎゅぎゅぎゅ閣下やあんたの弟君に言やぁ、喜んでやるだろうに」
「馬鹿を言うな。あの二人にそんなことを頼んだら、陛下の身が色んな意味で危険だろう?」
「閣下の汁だらけになるとか、二人の引っ張り合いになって腕が伸びちまうとか?」
 ヨザックは相手を怪訝そうに見上げる。言っていることも半分は本当だろうが、やはり半分は、自分への休日安眠妨害のイヤガラセも入っている気がする。見下ろしてくる男の笑みが、どうにもそう思わせるのだ。
 何となく、気に入らない。
「へーぇ、つまり、オレなら陛下は安全ってわけか?……で・も」
 ベッドから床へと足を下ろしてこちらも立ち上がると、相手の顔を意味ありげな笑顔で覗きこんでやる。
「いいのか?そーんなにオレを信用しちまって。案外、あの二人に任せるよりも陛下が危険なことになっちゃったりしてー?」
 少しぐらいの反撃は許されるだろう。そう思っての言葉だったのだが、相手は相変わらず涼しい顔を崩さずに即答した。
「残念だが、それはあり得ないな」
「なぜ?」
「陛下が危険な目に遭えば、俺がその相手にどんな行動をとるか、お前なら充分すぎるくらい知ってるだろう?」
 そのあまりにも完璧な笑顔に、ヨザックは一瞬にして全身の温度が下がった。
 どんな末路が待っているかなど、想像したくもない。
「ま、そういうわけだ。それに、お前が一番暇そうだしな。頼んだぞ」
 勝ち誇ったように笑いながら去っていく背中に、ヨザックは心中だけで毒づいた。


――コンラッドめっ!!


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★私は色んな意味で次男閣下を誤解しています。(苦笑)
 ちなみにこれは、「拍手お礼A−2」につなげて読めなくもないです。(個人的には繋がっているつもりです。)

 

 

 

08224日まで頑張ってくれていた話です。

 

 

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