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(料理人と音楽家)

 

 

 

 陽気な骸骨が一味に加わってからというもの、朝のサニー号ダイニングに足を踏み入れてくる者の順番が変わった。
「おはようございます、サンジさん!今日は朝からいいお天気ですねー。太陽が目に沁みます。私、目なんて無いんですけどー!ヨホホ!」
 要するに、料理人であるサンジを除けば、その骸骨が一番乗りするようになったのだ。


 音楽家であるこの骸骨、ブルックは、毎朝クルーたちを起こすために、バイオリンと歌を大音量で演奏している。
 以前所属していた海賊団でも日課であったというそれは、毎回その日に合わせて曲をチョイスし、しかも身支度もしっかりと整えてからの演奏というこだわりぶり。よって、全員が起きれば、ブルックはそのままこうしてダイニングへと直行するだけとなる。自然、彼が一番乗りになっていた。きっとルフィたちは今頃ようやく、顔を洗って着替えているのだろう。

 スープを火にかけながら、サンジは入口でシルクハットを掲げている長身に視線を向けた。
「おう。相変わらず早ェな、お前は。しかもうるせェ」
「おやおや、手厳しぃー!」
 軽くからかえば、返ってくる予想通りの反応。サンジは思わず小さく笑う。
「目覚めの牛乳でも飲むか?」
「それはいいですね!ぜひお願いします」
 弾んだ声で言ったブルックは、ご機嫌そうに鼻歌を歌いながら席に着いた。おそらく、今朝の目覚めの歌の名残だろう。片手には、やはりその際に使ったのだろうバイオリン。
 聞こえ、目に映ったそれらに、サンジはほんの少しだけ、顔を顰めた。


 料理人であるサンジは、誰よりも早く起きる。そのため、ブルックが演奏するという目覚めの音楽を、彼は未だ一度も聴いたことがなかった。
 今までは早くダイニングに来ることが多かったナミやロビンたちも、最近はブルックの後にやってくる。曰く、「ブルックの演奏、大音量だから二階にも響くのよ。まぁ、それぐらいしないとあの男共は起きないだろうから、当然だけど。……せっかく素敵な音楽が聞こえるんだもの、それを聴いてから動き出したいじゃない?」とのこと。
 だが、男部屋から広い芝生の甲板を挟んだこのキッチンでは、大音量だというその演奏も、聞こえた試しが無い。
 つまり、一味の中でブルックの朝の音楽を聴いたことがないのは、サンジのみということ。


「ほらよ」
 グラスを差し出せば、その中身と同じ真っ白な細い指が「ありがとうございます」と受け取る。その横顔を見詰めながら、サンジは何でもない風を装って言った。
「なぁブルック。それを飲んでからでいいんだが」
「はい、何でしょう?」
「朝飯作りのBGMにいい曲、頼む」
 自分ばっかりが朝の音楽を聴き逃しているなんて不公平じゃないか、そんな本音は絶対に口には出さない。
 対するブルックは、嬉しそうに「喜んで!」と即答すると、一秒でも早く演奏を始めたいとでもいうように、手にしていた牛乳を一気に飲み乾した。



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ルンバー海賊団の頃のように、ブルックさんはサニー号でも目覚めの音楽を演奏しているんだろうな、と。

 ルフィは喜んで起きそうですね。ゾロは……どうでしょう?起きるんでしょうか??(笑)

 

<追記>

 とか何とか言っていたら、アニメのオリジナル話(第384話)で、ブルックさんの朝の演奏の様子が少し出てきましたね。はりきって大分朝早くから演奏したブルックさんに、「うるせぇ!」と怒鳴るゾロ、全く起きずに高鼾のルフィ。想像と真逆の様子がそこにはありました。(大笑)

 

 

 

09年01月30日まで頑張っていてくれた話です。

 

 

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