空が青くて

 

 

「なんだっけ……」

 寝転がって空を見上げたまま、渋谷有利はポツリ、と呟いた。

 

 久しぶりにこちらの世界に戻ってくれば、執務だけでなく勉強も溜まっていると、熱心な教育係から午前中ビッシリと授業を入れられてしまった。

 そんな中でようやくもらえた昼休み。野球小僧がこれ以上室内でじっとしていられるか!とばかりに外へ出て、こうして今、裏庭の草むらで寝転がっている。

柔らかな風が吹く度に、ふわ、と草や花の香りがしていた。

 

 

 

「なんだっけ……」

 先程と全く同じポーズで、全く同じ台詞を吐く。

 見上げる空はどこまでも青かった。ずっと見詰めていると吸い込まれてしまいそうな、青。その色に見覚えがあった。最近よく見るようになった色だ。しかし、それが何なのか思い出せない。

「海?いや、最近じゃないな。 ライオンズ?いやいや、それこそ最近じゃないよなぁ。色も微妙に違うし……」

「坊ちゃん?」

 突然視界が遮られた。

 有利と空の間に割り込んできた顔が、一つ。

「ヨザック……」

「何してるんです?こんな所で、お独りでブツブツと」

「……そっか」

 有利が呟く。

「はい?」

「うん、そうだ。これだったんだ」

「え?これって……何が?」

 有利が満足気に笑う。

そんな有利を、お庭番の青い瞳が至極不思議そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

あとがき

「お題モノではお庭番にこだわらない」とか言っておきながら、一発目がこれかい。(苦笑) いや、違うんです、これはお題の順番の関係ですからっ!

空が青いと、管理人はお庭番の目の色を思い出すわ〜、という話でした。(←!?)

 

 

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