拍手お礼A−3
(語られなかった世界6より)
「あ、小狼君たち帰ってきたみたい」
借家の玄関のドアが開く音に反応し、サクラが料理の手を止めて出迎えに行った。ファイは作業のキリが悪かったため、少し遅れて玄関の方へと向かう。
と、廊下の途中で、師弟コンビを迎えに行ったはずの少女が、慌てたようにパタパタとこちらに引き返してきた。
「あれ?どうかしたの、サクラちゃん?」
「大変、ファイさん!急いでお料理の追加を作らないと!お客さんも一緒に来てるんです!」
「お客さん?」
台所へと駆けていく少女の背中を見ながら、魔術師は小首を傾げた。確かあの二人は、剣の訓練に出ていたはずだ。道中、気の合う人物にでも出会ったのだろうか?
とりあえず様子を見ようと玄関に足を向けた彼は、再び小首を傾げた。
「あれ?お客さんはー?」
そこにいたのは、見慣れた二人と一匹のみ。どの顔も何ともいえない表情を浮かべている。
「いえ、それが……」
「俺たちは客なんざ連れてきた覚えはねぇんだが」
「サクラが二人を見ていきなり、『あ、お客さんも一緒なんですね』って」
サクラにだけ見える客。となれば。
「つまり……幽霊?」
シン……と一瞬の沈黙。
「ゆっ幽霊って、どう対応したらいいんでしょう!?」
「もーっ!黒鋼、何で幽霊なんて連れてきちゃうの!?」
「そうだよ黒様―、ちゃんと責任とって何とかしてきて!」
「何で俺のせいになってんだよ!?そもそも見えねぇ奴をどうしろってんだ!?」
「いーからとりあえず外に出て、家から幽霊を出して!」
彼らの混乱など露知らず。少女は意気込んで料理の腕を振るっていたのだった。
「よーし!美味しいもの一杯作らなくっちゃ!」
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★サクラちゃんは無意識のトラブルメーカー?
今回の拍手小話の全てで黒鋼さんにばかり受難があるような気がするのは、きっと気のせいです。(笑)
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