Each individual

 

 

「全員無事で何より。……それでいいんだ」

 低めの落ち着いた声に続き、ジャリ、と砂を踏む音。メシにするぞと言いながらそのまま離れて行く靴音に、ロビンは咲かせていた耳を散らした。

「成程ね」

 知らず漏れた息は、溜息か苦笑か。

 彼ららしいとも思うし、無茶をするとも思う。それで生き延びたあの剣士は、もはや「強靭」という言葉さえ超えているとも。

 

 

 戦闘であれだけダメージを受けていたはずのルフィが、自身でも知らないうちにすっかり回復していたこと。そしてそれに反するように、出血多量でかなりの重傷を負っていたゾロ。

 その理由を多少なりとも知っているのは、一味の中ではおそらく、本人であるゾロを除けばサンジだけだろう。彼の一連の様子を見ていれば、察しはつく。そして、その件について彼が他の仲間達に隠そうとしていることも。

 頭では、ロビンも分かっていた。彼らが話そうとしないのなら、自分達は何も事情を知らないままでいいのだと。

 けれど、駄目だった。

 陽気そうな二人組が経緯を見たと騒ぎ、サンジがその二人組を掴んで屋敷の外へと引きずっていくのを見た瞬間、ロビンはネクタイの方の男の肩に迷わず自分の耳を生やしていた。

 

 ――やっぱり本音は、真実を知りたくて堪らなかった。

 

 ズルいことだと、自覚はしている。

 隠そうとするサンジ達の意思に反する行為であるし、何より、真相を知りたがっているのは、ロビンだけではない。ナミも、ウソップも、チョッパーも、フランキーも。皆、本当は真実を知りたいと思っている。

 ルフィは――。

 

「おーい!お前ら!さっき、何か見たようなこと言ってなかったか?」

 

 屋敷へと戻ってきた二人組に向かって、ルフィが片手を振りながら声を上げる。

 ルフィも、知りたくないわけではないだろう。実際、自身が急に回復したことを不思議がっていたし、ゾロのことも気にしていた。

 けれど。

「野暮なこと訊くな」

「全員無事で……なによりだ」

 先ほどとは一変、凛々しくそう返してくる二人組に、ルフィは「何だ?」と不思議そうに首を傾げはしたが、ただそれだけだった。それ以上無理に追求しようとはしない。

 サンジに言われた言葉をまるで自分達の台詞のように語る二人の様子には思わず笑ってしまったが、一方で、やはりルフィはそうなのか、とロビンは思う。流れで自然に経緯を知る分には構わないが、自分から無理に掘り下げてまで知ろうとは思っていない。

 結果的には、ルフィはそれでいいのだろうと、ロビンも思う。サンジも似たようなことを言っていたが、ルフィが真実を知れば、ゾロに対して怒るだろうし、それ以上に自分を責めるだろう。今回のことは、少なくともまだ、ルフィの耳には入れない方がいい。

 

 ゾロに付き添うチョッパーにちょっかいをかける麦わら帽子の背中を見やり、ロビンは屋敷の奥へと足の向きを変えた。

 今ロビンが抱えているこの想いをゾロに告げるのは、彼の意識が無いうちがいいだろうとは思う。だが、他者が傍にいる今はまずい。

 それならば、まずは。

「ロビンちゃん!どうかしたの?」

 近づいてくるロビンに気付き、独り調理の準備をしていたサンジが手を止め、嬉しそうな笑みを浮かべてくる。

 いつも通りの態度。彼も、事の全てを知ったのはロビン同様つい先程であったはずなのに、動揺などこちらには微塵も感じさせない。秘めることに徹したその態度は、さすがと思う反面、どこか少し寂しくもあった。けれど、ロビンが彼に今一番伝えたい言葉は、それではない。

 調理台を挟んだ向かいで足を止め、ロビンは微笑んだ。

「ありがとう。またこうして貴方の料理が食べられること、本当に嬉しいわ」

 一瞬、ほんの一瞬だけ、サンジは驚きと疑問を綯い交ぜにしたような顔で目をパチくりとさせた。

 けれどそれはすぐに解け、穏やかな笑みに変わる。

「おれもだよ、ロビンちゃん。おれも、おれの料理をこうしてまたみんなに食べてもらえること、すげぇ嬉しい」

 その言葉、“彼”にも聴かせてあげたいわ。

 浮かんだそれは胸中だけに留め、ロビンもまた、穏やかに微笑み返した。

 

 

* * * * * * * * * *

 

 

「フ、フ、フ、フランキー!」

 妙な呼ばれ方に、フランキーは握っていた鉛筆を地面に置いた。顔を上げれば、片手にランタン、もう片手にトレーを持ったウソップが、明らかにガタガタと震えながらこちらにやってくる。歩きながらもキョロキョロと周囲を伺うその様は、明らかに「怯え」だ。

 思わずフランキーは眉根を寄せた。

「お前、まさかまだ怖がってんのか?もうここにはゾンビどもはいねェだろうが」

「こっ、怖いわけねぇだろ!?ただ、その、夜の森で迷子になってる可哀想な奴とかがいたら、おれ様が助けてやらなきゃなぁーと思って。それで周囲を確認してたってわけだ。怖いとかじゃないぞ!?」

 フランキーの間近に来てからようやく震えを止めて胸を張るウソップに、フランキーは苦笑した。

 確かに、宴をした屋敷からこのグレーブヤードに来るまでには多少の距離がある。昨日終結したとはいえ、ゾンビや化け物だらけだった森や墓を夜に通り抜けるというのは、それなりに勇気が必要かもしれない。

「わかった、わかった。……で?それは?」

 左手のトレーを指させば、「あぁ」と、ウソップが差し出してくる。

「墓造りを手伝ってくるって言ったら、サンジがついでに持って行けって。夜食だと。二人分」

「へぇ。気が利くな、グルグルの奴」

 受け取ると、中身はオニオングラタンスープだった。運び主があれだけガタガタ震えていたのに、トレーには少ししかスープが零れていないのは、カップにピッタリと張られたラップのお蔭か。ウソップがこうなることを見越したのかもしれない。さすがは一流コックを自称するだけのことはある。

「ゾロの方はどうだ?」

 隣の地面に腰を下ろしてくるウソップに、ラップを取ってスプーンを挿したカップを手渡しながら問えば、受け取るその手が微かに震えた。

「いや、まだ……」

 長い鼻が横に揺れ、小さく溜息が零れる。フランキーも「そうか」とだけ返し、残りのカップのラップを外すと、スプーンと共に手に持った。残ったトレーは脇に置く。

「……うめぇ」

 ずず、と微かにスープを吸う音に続いたそれに視線を戻せば、ウソップは悲しそうにも寂しそうにも見える顔で、表面に浮かぶチーズ付のパンを見詰めていた。

 カップを握る手に、グッと力が込められる。

「サンジの奴、絶対何か知ってるよな……」

 瞬間、ハッとしたようにウソップが目を見開いた。そのまま慌てた様子でフランキーを見上げてくる。

「あっ、わ、わりぃ!」

「あ?なんでそこでオメェが謝んだよ?」

「えっ、いや、その……何となく」

 段々と声を小さくして俯くその姿に、フランキーは思わず溜息をつく。

「別に、無理に持ち出すような話題じゃねェとは思うが、無理に避ける話題でもねェと思うぞ?」

「……まぁ、そう……だよな。わりぃ」

「だから謝るなって」

 軽く眉間に皺を寄せれば、ウソップが苦笑する。そうして、不意にカップを脇に置くと、両手を挙げて地面に背中から倒れ込んだ。

「あ〜、なんか駄目だ!ゾロのこともルフィが急に元気になったことも、めちゃくちゃ気になるけど、なんか訊いちゃマズい雰囲気が漂ってるし。でもやっぱ気になるし……!どうすりゃいいんだよ、コレ!!」

「まぁ、仮に正面きって訊いたとして、腹巻き剣士やグルグルコックが素直に言うとも思えねェがな」

「だよなぁ。確かに」

 はぁー、と夜空に向けて長い息を吐き、ウソップが両目を閉じた。

 青いな、とその横顔を見ながらフランキーは思う。自分も決して、真相が気にならないわけではない。ゾロには確実に何かがあっただろうし、サンジはそれを知った上で自分たちに隠そうとしている。

 だが、考えてみたところで、結果は今ウソップが言った通りだ。結局は、訊きたいけれど訊けない。仮に訊けたとしても、きっと本人たちが口を割らない。ならばもう、うだうだ考えずに「本人たちが隠そうとしているのなら、自分達は知らないままでいいんだ」と自分に言い聞かせる方が、ずっと楽だ。

 それに、男には男の気遣いというものがある。今回の場合、本人たちにわざわざ真相を訊くのは野暮だ。きっと、ウソップだってそれは分かっている。けれど、割り切れない。考えてしまう。逃げずに考え悩み、そこから抜け出せず、結果、感情を持て余す。

実に青くて、けれど――好ましい。

 

「何笑ってんだよ」

 知らず、口元が緩んでいたらしい。いつの間にか目を開けていたウソップが、不服そうにフランキーを見ていた。

「いや、オメェは偉いなと思ってな」

「はぁ?」

「それより長っ鼻」

「いや、その呼び方やめろって!」

「墓造り、明日の朝から早速始めるぞ」

「おっ!もう構想出来たのか!?」

 ぱっと表情を輝かせ、ウソップが上半身を起こす。

「まぁな。さっきブルックの船に行って、遺骨の量も見てきた。結構なデカさの墓になりそうだぜ。ほら、まだ途中だが、これが完成予想図だ」

 描きかけで脇に置いていた紙を差し出すと、ウソップが興味津津とばかりに受け取る。

「へぇ、どれどれ……――って、オイ!何だこのデザイン……!?」

「あ?何って、イカした墓に決まってんだろ?」

「何を『当然』みたいな顔してんだ!?何この砲台!?兵器か!?兵器なのか!?大砲装備の墓なんて聞いたことねぇぞ!?」

「仕方ねェだろ?デザインっつーと、おれはこっち系の方が得意だからな」

 自分ではかっこいいと思っているのだが、墓にはそんなに合わないだろうか?自分のデザインに何の疑問も持っていなかったため、ウソップの言うことがいまいちピンとこない。

 素直に首を傾げてみせると、ウソップは溜息交じりでキャップ越しに自身の頭をガシガシと掻いた。

「あーっ、もういい!墓のデザインはおれがやる!」

 そのまま、あっという間に手元の紙と鉛筆をひったくられる。

「見た目重視のデザインでいくからな。造り易さなんて考慮しねぇけど――問題ねぇよな?」

 ニヤリ、と挑むような笑みが見上げてくる。その顔は、さっきまでうだうだと悩んでいた少年とはまるで別人で。少しはふっ切れたのかと思う一方、職人魂をこれでもかと刺激される。

 負けじとフランキーも、ニヤッと片頬を上げた。

「あったりめェよ。おれを誰だと思ってんだ?」

 

 どんなデザインでも、実現してやる。

 

 

* * * * * * * * * *

 

 

「ゾロ!お前また包帯取ったな!?」

 ブルックと共にサニー号へと戻ってきたゾロの姿に、チョッパーは驚きを通り越して怒りの声を上げた。

 正直なところ、こうして出歩くことさえまだ心配な状態であるというのに、腹巻き剣士が巻いていたのは、文字通り腹巻きのみ。頭部や胸部、腕に巻いていたはずの包帯は、綺麗さっぱり無くなっていた。

「あぁ。アレ動きづらくてな」

「動かさねェために巻いたんだよ!」

 平然と言ってのけるゾロにツッコミを入れつつも、チョッパーは急いでリュックから新しい包帯を取り出す。まったく、これでは包帯がいくらあっても足りない。

「ちょっと待て!もうそんなモン要らねぇって!」

「要る!お前医者じゃないだろ!?何で勝手に判断するんだよ!?」

「自分の身体は自分が一番よく分かってんだよ!」

「分かってるなら、こんな無茶しねぇよ!」

 ゾロの肩に飛び乗り、包帯片手に攻防を繰り広げる。

 そもそも一緒にいたブルックは、どうしてゾロが包帯を取ろうとするのを止めてくれなかったのか。恨めしい気持ちで仲間に入ったばかりの骸骨をチラリと見やれば、彼はサンジと共に何やら謎の踊りを踊っていた。参った、よもや、あのテンションのサンジについていけるツワモノが現れようとは。

「とにかく!まだ包帯取るとか駄目だ!ちゃんと巻かせろ!!」

「うるせぇ!耳元でわーわー騒ぐな!!」

「巻かせてくれるまで絶対黙らねぇぞ!わぁーっ!わあーっ!わぁぁああーっ!」

「あーっ、もう、分かった!分かったから、ちょっと黙れ!」

 観念したようなゾロの叫びに、チョッパーは一度動きを止める。

 渋々といった態で、ゾロが片腕を差し出してきた。

「ん。さっさとしてくれ」

「……。巻いた後、もう勝手に取ったりしないか?」

「……」

「黙るなよ!?頷けよ!!」

「嘘はつきたくねぇ」

「それもう、包帯取るって宣言してるのと同じだぞ!?」

 あまりにも揺らがないゾロの態度に、チョッパーは軽く途方に暮れる。

 もはや、怒り疲れなのかツッコミ疲れなのかは分からないが、いつの間にやらすっかり脱力していた。

「はぁ……。もういい、わかった。包帯は諦めるよ」

「ほんとか!」

 パッと明らかに嬉色を浮かべる顔に、ますます溜息が出る。

「どうせ巻いてもスグ取っちゃうんだろ?それじゃ包帯の無駄だ。まぁ、一応最低限は回復してるし、百歩譲って包帯は諦めるよ。でも、しばらくは絶対大人しくしてろよ?暴れたりとかトレーニングとかしたら、麻酔打ってでも止めて、今度こそ包帯グルグル巻きだからな?」

 ゾロの肩から降りながら念を押せば、不意にかがんできたゾロに帽子を掴まれる。

 そのままグラリ、と一度大きく揺れる視界。

「さんきゅー、ドクター」

 ニッと歯を見せて笑うと、ゾロは踵を返し、サニー号のタラップを目指して歩き出す。

 一方のチョッパーは、その場で独りわなわなと震え。

「どっ、ど、ドクターとか言われたって、大目に見たりしないんだからな!コノヤロー!」

 離れて行く背に声を投げれば、振り返らずに片手だけがヒラリと揺れた。

 

 

 その後は、ローラの持っていたビブルカードに興味を惹かれたり、ルフィの兄の危険を知らされたりで、結局サニー号に乗り込んだのはゾロよりも随分後になってしまったが、甲板を見れば、ゾロは船縁に凭れ大人しく両目を閉じていた。

 その様子にホッとする一方で、改めてゾロは嘘をつかない男だと思う。さっきの「もう勝手に取ったりしないか?」に対する無言の返しもそうだが、答えにくい質問に嘘をつくぐらいなら、むしろ黙ってしまうような男だ。―― そう。昨日だって。

 

 

『よかった。重症なのには変わりねェけど、もう命の心配どころか、回復後に日常生活に支障が出るような心配もなさそうだ』

 昨日の晩。ゾロが目覚めたとサンジに起こされ、チョッパーはすぐさま一通りゾロの身体をチェックした。これほどの重傷でも持ちこたえられるタフさに驚きはしたが、それよりもやはり安堵の方が大きい。知らず、大きく息を吐いていた。

『でも本当、一体何があったんだ?こんなにダメージを残したゾロ、おれ初めて見たぞ』

 使用を終えた診察器具をリュックに戻しながら尋ねるが、返事がない。顔を上げれば、ゾロの視線が僅かにチョッパーから逸らされていた。

『ゾロ?どうかしたのか?』

『……いや』

『そうか?……ごめんな、おれ、気を失っちゃってて、クマが爆発を起こしたところまでしか覚えてねェんだ。他のみんなも、そうみたいで。もしかしてゾロ、あの後もまだ独りでクマと戦ったのか?それとも、新たにまた別の奴がやってきて、ソイツと戦ったとか?』

『……』

 またしても無言が返ってくる。視線も不自然に逸らされたまま。そこでようやく、チョッパーも気付いた。

『……ゾロ。もしかして、何があったのかおれ達に話したくねェのか?』

『っ……』

 ゾロの眉間に、微かに皺が寄った。けれど、やはりそれだけだった。言葉は返らない。途端、チョッパーはぎゅうっと胸を締め付けられるような心地になった。

 絶対に、何かはあったはずなのだ。一味で上位の戦闘能力を持この剣士でさえ生死の境を彷徨うような、大きな何かが。

 けれど、この男はそれを自分達に話してはくれない。無事に目覚めた安堵のままに色々と訊いてしまった自分も悪かったかもしれないし、ゾロにも何か考えがあるのかもしれない。だが、それでも。何故だか無性に悲しく、そして寂しかった。

『……そっか。なんか、ごめんな、変なこと訊いて』

 俯きそうになるのをグッと堪え、できるだけいつも通りの表情を保つ。

 そうだ、医者には冷静さも、そして時にはポーカーフェイスだって必要だ。これぐらい、なんてことは無い。――今の自分は、医者だ。

『……でも、せめてあと1つだけ、質問させてくれねェか?これ、何傷なんだ?刀傷でも刺し傷でもねェし、何か物がぶつかって裂けたにしても、ちょっと傷口が違うような感じがするし……。場合によっては、治療法が変わってくることもあるんだけど……』

 片付けた診察器具に代わり、新たに替えの包帯を取り出しながら問えば、ようやくゾロの口が動いた。

 

『……わりぃ。わからねぇ』

 

 「わからない」。

 もし最初に聞いた返事がこれだったら、チョッパーも「誤魔化された」と思ったかもしれない。でも、これまでの質問に対し、ゾロは何も答えなかった。ならば、今の質問にだって、そうしてもよかったはずだ。

 答えたということはつまり、何傷と表現すればいいのか、ゾロ自身も本当に分からないということ。

『そっか。分かった』

 ならば、自分がより慎重に傷の経過を見て、治療の善し悪しを判断していくしかないだろう。

 より一層気合いが入り、チョッパーは新しい包帯を解く腕に力が籠った。

 

 

 ……だというのに、あの剣士は早速その包帯を解いてしまっていて。

 改めて思い出すと、何やらフツフツと怒りが再燃し、チョッパーは船縁で眠る包帯無し男をジロッと横目で睨みつけた。すると、その手の類には敏感な男が、ピクッと反応する。

「って、何だよチョッパー、その目は!?言われた通り大人しくしてるだろーが!?」

 目覚めた途端、驚いたように声を上げてくるゾロの抗議を無視し、チョッパーは無言でゾロの元へと歩み寄る。

 少々気圧されたように見下ろしてくるその顔を、真っ直ぐに見据えた。

「絶対、何が何でも、お前のこと完治させてみせるからな。覚悟してろよ」

 力強く宣言すれば、ゾロが僅かに目を見開く。

 しかしそれは一瞬で細められ。

「おう。頼む」

 ニヤリと笑って返されたそれは、短く、けれど今度こそチョッパーの満足のいくものだった。

 

 

 

 

あとがき

 美月様から頂戴した「スリラーバーク後、ゾロのダメージについて各々考えるロビン、フランキー、ウソップ、チョッパー。」というリクエストで書かせて頂きました。美月様、本っ当にお待たせいたしました!(土下座)

 これまでに書いた『Each and every』や『幸せをつくる人』を受けてのリクエストなのかなぁ…と(勝手に)思い、今回はタイトル含め、微妙にそれらの続きを意識しながら書いてみました。何故“微妙”かというと、アチラは一人称で、コチラは三人称と、文体が揃っていなかったりするので。(苦笑)とはいえ、一応この話単品でも読めるようには書いたつもりです。

 あと、ゾロ好きさんということだったので、チョッパー部分にゾロを登場させてみたんですが……彼、かっこいい活躍が無いどころか、残念な扱いになっているかも…。(苦笑)お好きなキャラをすみません。

 それでは美月様、リクエスト本当にありがとうございました!!

 

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